名古屋高等裁判所金沢支部 昭和26年(ナ)3号 判決
原告 酒井義雄
被告 富山県選挙管理委員会
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告は昭和二十六年四月二十三日執行の宮川村議会議員及び同村村長並に同月三十日執行の富山県議会議員の選挙の効力に関する原告の異議並に訴願につき被告が同年六月十一日為した決定並に裁決を取消す。右各選挙を無効とするとの判決を求め、その請求原因として昭和二十六年四月二十三日宮川村に於て村議会議員及び村長の同月三十日富山県議会議員の選挙が行われ原告はその選挙人であるが、原告は同年五月七日前者の選挙の無効を主張して宮川村選挙管理委員会に異議を申立てたが、同月十七日棄却せられたので同月三十日被告に対し訴願を提起したところ被告は同年六月十一日棄却の裁決を為した、又原告は後の選挙の無効を主張して五月十二日被告に異議を申立てたが六月十一日棄却された。原告が、右各選挙の無効を主張するのは次の理由による。即宮川村選挙管理委員会委員長松枝善正は同村の投票管理者開票管理者及び選挙長を兼ねていたところ同人は右委員長を退職した事実なく又、投票管理者開票管理者及び選挙長の職は辞することを得ないものであるに拘らず、宮川村選挙管理委員会は松枝善正が昭和二十六年四月十日右委員長並に投票管理者開票管理者選挙長の職を辞したものとなし、同月十二日栂正一を右委員長並に投票管理者開票管理者選挙長に選任した。然しながら真実の委員長投票管理者開票管理者選挙長は松枝善正であつて栂正一は正当のものでないからかかる者の管理の下に執行せられた宮川村の選挙は全部無効である。仮に松枝善正が四月十日に辞職したものとしても栂正一の選任せられたのは四月十二日であるから四月十一日の一日間投票管理者開票管理者及び選挙長の重職を空位ならしめたのは公職選挙法に違背する。又委員長退職承認の手続に違法がある。いづれにしても宮川村議会議員及村長の選挙は無効であり宮川村投票所に於ける県議会議員の有効投票千三百票を無効とすれば県議会議員の選挙の結果に異動を及ぼすことが明らかであるから、前記被告の決定並に裁決の取消並に右各選挙の無効の確定を求める為本訴に及ぶと陳述した。(立証省略)
被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め答弁として宮川村選挙管理委員長松枝善正は昭和二十六年四月十日同村選挙管理委員投票管理者開票管理者選挙長の各退職届を同村選挙管理委員会に提出し翌十一日その承認を得る為同村選挙管理委員会を招集したので同日全委員出席の上右各職の辞任を承認した。委員長である委員が委員を退職すれば当然委員長たる職を失うものであるから松枝善正は委員の退職と同時に委員長を退職したものである。翌十二日委員長職務代理委員栂正一によつて招集された委員会に於て宮川村選挙管理委員長投票管理者開票管理者選挙長として栂正一を選任したもので右選任に違法はない。投票管理者開票管理者及び選挙長に一日の空席があつても、これらの職務代理者として佐々木甚作が選挙期間中終始在職していたから原告の主張は当らない。その余の原告主張事実は争はないと述べた。(証拠省略)
三、理 由
成立に争のない乙第一号証の一乃至四第二号証並に証人谷口善一の証言を綜合すれば被告主張の如く松枝善正並に栂正一の宮川村投票管理者開票管理者、選挙長の退職並に選任松枝善正の同村選挙管理委員会委員の辞任及び栂正一の同委員会委員長の選任が行われたことが明らかである。しかして地方自治法第百八十七条によれば選挙管理委員会の委員の中から委員長が選挙されるのであるから、委員長である松枝善正委員が委員の退職を申出づれば当然委員長の職を退く意思を包含するものというべく、従つてこの申出でに付当該選挙管理委員会の承認を得た以上右退職は委員並に委員長の退職として適法であるといわなければならない。又、投票管理者開票管理者選挙長が退職できないとの規定はないから前記松枝善正並栂正一の退職並に選任はいづれも適法であり原告の主張は当らない。次に前記各証拠によれば本件選挙期間中は投票管理者、開票管理者並に選挙長の職務代理者として佐々木甚作が在職していたことが認められるから原告主張の如くこれらの職に一日の空位があつたとしても選挙の管理については支障なくこの点に関する原告の主張も理由がない。
よつて、原告の請求を失当として棄却することとし民事訴訟法第八十九条により主文の如く判決する。
(裁判官 斎藤省一郎 観田七郎 松島政一)